デザインの打ち合わせで「もう少し上品な感じで」「もっと親しみやすく」という言葉が出ることがあります。制作側はうなずいて修正案を出しますが、また「そうじゃない」となる。
これは、トーンという言葉が指すものが、当事者間で共有されていないために起きます。トーンは感覚的なものに見えて、実際にはいくつかの具体的な要素の組み合わせで決まります。分解できれば、注文も修正もずっと正確になります。
トーンを作っている5つの要素
1. 余白の量
最も影響が大きい要素です。要素と要素の間隔を広く取ると、上品・高級・落ち着きの方向に振れます。狭く詰めると、情報量が多い・活発・お得感の方向に振れます。
高級ブランドのサイトが余白だらけなのも、量販店のサイトが情報でぎっしりなのも、意図的な選択です。「もっと上品に」と言われたときに最初に試すべきは、色や書体ではなく余白を広げることです。
2. 書体
明朝体は、伝統・格式・落ち着き。ゴシック体は、明快・現代的・読みやすさ。同じ文章でも、明朝体で組めば重く、ゴシック体で組めば軽く見えます。
太さも効きます。細い書体は繊細で上品、太い書体は力強く親しみやすい。書体を変えずに太さだけ変えるのは、トーン調整の有効な手段です。
3. 色の彩度
同じ「青」でも、鮮やかな青と、彩度を落とした青では別物です。彩度が高い=元気・若い・カジュアル。彩度が低い=落ち着き・上質・大人。
「親しみやすく」という要望に対して、色を増やすのではなく彩度を少し上げるだけで解決することがあります。逆に「上品に」なら、彩度を落とすのが定石です。
4. 角の丸み
丸みが強い=やわらかい・親しみ・安心。直角=硬質・誠実・専門的。ボタンやカードの角丸を数ピクセル変えるだけで、印象は動きます。子ども向け、医療、飲食では丸みが選ばれ、金融、建築、BtoBでは直角に近い形が選ばれる傾向があります。
5. 写真の色調
明るく彩度の高い写真は、元気で健康的な印象。彩度を落とし、コントラストを抑えた写真は、静かで上質な印象。同じ写真でも、加工の方向で印象が変わります。サイト内の写真の色調が揃っていないと、どれだけレイアウトが整っていてもトーンがぼやけます。
代表的なトーンの作り方
上品・高級
- 余白:広め。要素の間隔を大きく取る
- 書体:明朝体、または細めのゴシック
- 彩度:低め。無彩色に近い色を多用
- 角:直角か、ごく小さい丸み
- 写真:彩度を落とし、暗部を活かす
避けるもの:装飾の多用、複数色の併用、太い書体、強い影。
親しみ・やさしい
- 余白:ほどほど。詰めすぎない
- 書体:丸みのあるゴシック体
- 彩度:中〜高め。暖色を含む
- 角:しっかり丸い
- 写真:明るく、人が写っているもの
避けるもの:黒に近い色の多用、鋭角、細すぎる文字。
信頼感・堅実
- 余白:均一で規則的。リズムを崩さない
- 書体:標準的なゴシック体。奇をてらわない
- 彩度:低〜中。紺、グレー、深緑
- 角:直角か小さな丸み
- 写真:自社の実物。素材写真を避ける
避けるもの:派手な演出、流行の装飾、過度なアニメーション。「新しさ」より「変わらなさ」を出すのがこのトーンです。
先進的・スマート
- 余白:広く、非対称も許容
- 書体:細身のゴシック、英字を併用
- 彩度:低い背景に、鮮やかなアクセント1色
- 角:直角、または完全な円形
- 写真:抽象的なグラフィック、3D、グラデーション
トーンは「2つまで」
トーンの指定は2つまでに絞ってください。3つ以上を同時に満たそうとすると、どれも中途半端になります。
たとえば「上品」と「親しみ」は、余白と彩度の方向が逆です。両立させるには、どちらかを主、どちらかを従にする必要があります。打ち合わせでトーンを伝えるときは、「上品を7割、親しみを3割」のように比率で伝えると、意図が正確に届きます。
修正を依頼するときの言い方
| 感覚的な表現 | 具体的な指示に置き換えると |
|---|---|
| もっと上品に | 余白を広げ、彩度を下げてほしい |
| もっと親しみやすく | 角を丸くし、写真に人を入れてほしい |
| もっと信頼感を | 装飾を減らし、実績の数字を大きく |
| ちょっと重い | 書体を細く、余白を増やす |
| 安っぽく見える | 色数を減らし、影と装飾を削る |
右側の言い方をすると、修正が1回で終わることが増えます。
TEHON での見比べ方
TEHON では、掲載サイトをトーンの軸で分類しています。「上品」「親しみ」「信頼感」「明るい」「モダン」「温かみ」といったタグから絞り込めます。
- 目指すトーンで絞り込み、複数のサイトを並べて見る
- 共通している要素を探す(余白の量、書体、彩度、角の丸み)
- その共通点が、自社で実現できるかを確認する
同じトーンのサイトを5件並べて見ると、そのトーンを作っている要素が具体的に見えてきます。言葉で覚えるより、実例を並べたほうが早い領域です。参考デザインギャラリーから、トーンで絞り込んでご覧ください。
まとめ
- トーンは感覚ではなく、余白・書体・彩度・角の丸み・写真の色調で決まる
- 「上品に」の第一手は、色ではなく余白を広げること
- トーンの指定は2つまで。3つ以上は両立しない
- 修正依頼は「なんか違う」ではなく、5要素のどれかを指定する
- 同じトーンのサイトを並べて共通点を探すのが、最短の理解法
トーンを分解できるようになると、デザインの打ち合わせが「好き嫌い」から「合っているかどうか」の会話に変わります。
マザーハンズでは、広島・東京を拠点にWebサイトのデザインとブランディング支援を行っています。お問い合わせよりご相談ください。