Webサイトのリニューアルが止まる原因は、制作会社の力量よりも、発注側の社内で決まっていないことがあるケースのほうが多いというのが、正直な実感です。
デザイン案を出したら「社長が見てから」と2週間止まる。原稿を依頼したら「誰が書くか決まっていない」と1か月止まる。公開直前に「そもそも問い合わせを増やしたかったんじゃないの」と根本から巻き戻る。
こうした停滞は、着手前の1〜2時間で防げます。この記事では、制作会社に声をかける前に社内で決めておくべき7項目を挙げます。
1. 何のためにリニューアルするのか(1つに絞る)
最初にして最大の項目です。リニューアルの理由として挙がるものは、たいてい複数あります。
- 見た目が古いので新しくしたい
- スマートフォンで見づらい
- 問い合わせが少ない
- 採用の応募が来ない
- 自分で更新できない
- 会社の方向性が変わった
このすべてを同時に解決しようとすると、設計が破綻します。優先順位の1位をひとつだけ決めてください。
順位が違えば、作るものが変わります。問い合わせを増やしたいなら、導線とコピーに予算を使うべきです。採用が目的なら、社員インタビューの取材と撮影に予算を使うべきです。見た目の刷新が目的なら、デザインに予算を集中させるべきです。「全部やりたい」と言うと、全部が薄くなります。
2. 成功を何で測るか
1で決めた目的に対して、何が起きたら成功なのかを決めます。
- 問い合わせ件数が月◯件になる
- 採用応募が年間◯名になる
- 特定のキーワードで検索1ページ目に入る
- 営業先で「サイト見ました」と言われる回数が増える
数字でなくても構いませんが、公開から半年後に振り返れる形にしておいてください。
この項目が決まっていないと、公開後に「で、良くなったんだっけ?」という会話になり、次の投資判断ができなくなります。逆にここが決まっていると、制作の途中で判断に迷ったときの基準になります。「この演出は目的に効くのか」と問い直せるからです。
3. 決裁者と、その人がいつ見るか
デザイン案が出てから社長に見せて、そこでちゃぶ台返しが起きる。リニューアルで最も多い事故です。決めておくことは2つ。
- 最終決定権を持つのは誰か
- その人がどのタイミングで確認するか
おすすめは、デザイン案が出る前の「構成案」の段階で一度見てもらうことです。この段階なら方針転換のコストが小さい。デザインまで進んでから覆すと、費用も時間も無駄になります。
決裁者が多忙で確認が遅れる場合は、あらかじめ確認日をカレンダーに入れておくのが確実です。「出来たら見せます」では止まります。
4. 原稿は誰が書くか
制作の遅延原因の第1位です。サイトに載せる文章は、意外なほど大量にあります。10ページのサイトなら、原稿用紙にして数十枚分。これを本業の合間に書くのは、想像よりずっと大変です。決めるのは3点。
- 誰が書くのか(社内の担当者名を決める)
- いつまでに書くのか
- 書けない場合、制作会社に頼むといくらか
「たたき台は制作会社に作ってもらい、社内で加筆修正する」という進め方が、最も破綻しにくいと感じています。ゼロから書くのは大変でも、直すのはできる。この差は大きいです。
5. 写真をどうするか
原稿と並んで止まりやすいのが写真です。既存の写真を使うのか、新しく撮影するのか、ストックフォトでよいのか。
業種によっては、ここが成果を大きく左右します。工務店、飲食、美容、医療など、実物や人が判断材料になる業種で素材写真を使うと、途端に信用が下がります。
撮影する場合は、撮影日を先にカレンダーに入れてください。「デザインが決まってから撮影」にすると、天候や人のスケジュールで確実に遅れます。
6. 公開後、誰が更新するのか
ここが決まっていないサイトは、1年後にほぼ確実に情報が古くなります。決めることは3点。
- 更新の担当者は誰か
- 何をどれくらいの頻度で更新するのか(お知らせを月1回、実績を四半期に1回、など)
- 更新できない場合、制作会社に頼むといくらか
更新頻度が決まると、必要な管理画面の作り込み量も決まります。「お知らせしか更新しない」なら、他のページを編集可能にする必要はなく、構築費を抑えられます。逆に「実績を毎月追加する」なら、実績用の投稿機能をきちんと作り込む価値があります。更新の予定が、構築の仕様を決めます。
7. 現在のサイトの資産を確認する
リニューアルは、ゼロから作り直す作業ではありません。今のサイトが持っている資産を引き継ぐ必要があります。
- ドメインの契約名義と管理会社:前の制作会社の名義になっていることがあります。これは移管手続きが必要です
- サーバーの契約情報:ログイン情報が誰も分からない、というケースは珍しくありません
- アクセス解析のデータ:Google Analytics や Search Console のアカウント権限。過去のデータは貴重な判断材料です
- URLの一覧:現在のページと、リニューアル後のページの対応表。これがないと、検索順位を引き継げません
- よく見られているページ:解析データで上位のページは、リニューアル後も残すべきです
特にURLの対応表は、リニューアルで最も見落とされがちで、最も影響が大きい項目です。URLが変わるページには、旧URLから新URLへの転送設定(301リダイレクト)が必要になります。これを忘れると、それまでの検索順位が失われます。制作会社に「リダイレクトの設定は含まれていますか」と確認してください。含まれていない見積もりは珍しくありません。
着手前チェックリスト
| # | 項目 | 決まった内容 |
|---|---|---|
| 1 | リニューアルの目的(1つ) | |
| 2 | 成功の測り方 | |
| 3 | 決裁者と確認タイミング | |
| 4 | 原稿の担当者と期限 | |
| 5 | 写真の方針と撮影日 | |
| 6 | 公開後の更新担当と頻度 | |
| 7 | ドメイン・サーバー・解析の管理情報 |
この7項目が埋まった状態で相談に行くと、初回打ち合わせの内容がまったく変わります。制作会社側も、要件が見えているので精度の高い見積もりが出せます。
参考サイトを集めるのは、このあと
よくあるのが、7項目を決める前に参考サイト集めを始めてしまうケースです。目的が決まっていない状態で参考サイトを見ると、単純に「かっこいいかどうか」で選んでしまいます。目的が決まってから見ると、「このサイトは予約獲得が目的だから、うちとは違う」という判断ができるようになります。
順番としては、7項目 → 参考サイト集め → 制作会社への相談、が効率的です。参考サイトの集め方については、「このサイトみたいにして」で失敗する理由で詳しく書いています。
実際に参考サイトを探す際は、TEHON の参考デザインギャラリーを目的や業種で絞り込んでご覧ください。
まとめ
- リニューアルの目的は1つに絞る。全部やろうとすると全部が薄くなる
- 決裁者には、デザインではなく構成案の段階で見てもらう
- 遅延原因の1位は原稿、2位は写真。担当と期限を先に決める
- 更新の予定が、構築の仕様を決める
- ドメイン・サーバー・解析の管理情報と、URLの対応表を必ず確認する
この7項目は、制作会社に聞かれてから考えるのではなく、声をかける前に社内で決めておくことに意味があります。決まっていれば、リニューアルは驚くほどスムーズに進みます。
マザーハンズでは、広島・東京を拠点にWebサイトの制作とマーケティング支援を行っています。要件整理の段階からご相談いただけます。お問い合わせよりお気軽にどうぞ。