Webサイトを作るとき、他社のサイトを参考にするのはごく普通の工程です。私たちも必ず行います。
一方で、「どこまでが参考で、どこからが真似なのか」という線引きは、多くの発注者にとって曖昧です。この記事では、実務でどう考えるべきかを整理します。なお、以下は一般的な考え方の説明であり、個別の案件については弁護士にご確認ください。
著作権が及ぶもの、及びにくいもの
保護されやすいもの
- 写真、イラスト、動画
- 文章(キャッチコピー、説明文、記事)
- ロゴマーク(商標としても保護されます)
- 独自性の高いイラストやグラフィック
これらは、他人が作ったものをそのまま使うことはできません。ここは明確です。
保護されにくいもの
- レイアウトの構造そのもの(左にメニュー、右に本文、など)
- 一般的なUIの作法(ハンバーガーメニュー、パンくずリスト、カード型の一覧)
- 配色の組み合わせ(色そのものに著作権はありません)
- 「よくある構成」(ヒーロー画像→サービス紹介→実績→問い合わせ)
これらは、多くの人が同じ課題に対して行き着いた解決策であり、特定の誰かのものではありません。構成や配色を参考にすることは、通常は問題になりません。
実務上の線引き
1. 素材を持ってきていないか
最も明確な線です。写真・イラスト・文章・ロゴを、他社サイトからコピーして使うのは論外です。
意外と起きるのが、参考サイトの文章を少し変えて使うケースです。「〇〇を通じて、お客様の△△に貢献します」といったコピーを、単語だけ入れ替えて流用する。これは表現の複製にあたる可能性があります。自社の言葉で書き直してください。手間はかかりますが、そもそも他社のコピーは他社の強みを表現したものなので、流用しても効果がありません。
2. 「見た人が同じサイトだと思うか」
構成が似ていても、色・書体・写真・言葉が違えば、別のサイトとして認識されます。逆に、配色もロゴの形も余白の取り方も全部揃えると、混同されるレベルになります。
判断の基準は「その業界を知らない人が見て、同じ会社だと勘違いするか」。勘違いされるレベルなら、著作権以前に不正競争防止法の領域に近づきます。とくに競合他社に対してこれをやるのは危険です。
3. 独自性のある表現を持ってきていないか
一般的な構成ではなく、その企業が独自に考案した見せ方を丸ごと持ってくるのは避けるべきです。独自のインタラクションや、特徴的なグラフィック表現、そのブランドの記号になっている演出。これらは「よくある構成」ではなく、その企業の資産です。
「参考にする」の正しいやり方
手順1:良いと思った理由を言語化する:「このサイトが良い」ではなく、「料金表が1ページに全部載っていて探さなくていい」まで分解します。
手順2:その理由が自社にも当てはまるか確認する:料金体系がシンプルな会社なら流用できます。オーダーメイドで価格が案件ごとに変わる会社なら、同じ形にしても機能しません。
手順3:解決策として再構築する:「探さなくていい」という価値を、自社の条件で実現する方法を考えます。結果として、見た目は元のサイトと違うものになります。
この手順を踏むと、自然と「真似」にはなりません。逆に、手順1を飛ばして見た目をコピーしようとすると、真似になります。参考にすべきは見た目ではなく、判断の理由です。
スクリーンショットの扱い
問題になりにくい使い方
- 社内の打ち合わせ資料として使う(私的・内部利用)
- 提案書に「参考例」として、出典を明記して掲載する
注意が必要な使い方:自社サイトやブログに、他社サイトのスクリーンショットを掲載する。これは「引用」として成立させる必要があります。引用が認められるには、一般的に次の条件が求められます。
- 引用する必然性があること
- 自分の著作物が主、引用部分が従であること
- 引用部分が明確に区別されていること
- 出典を明示していること
このうち2番目が最も重要です。スクリーンショットが大きく載っていて、自分のコメントが1行しかない、という状態は「主従が逆転している」と判断される可能性があります。他社サイトを紹介するコンテンツを作るなら、引用する画像に対して、十分な量の自分の論評を書く必要があります。これは法的な要請であると同時に、読み手にとっての価値でもあります。
TEHON がやっていること
TEHON は他社サイトのデザインを紹介するギャラリーサイトです。この記事で書いた考え方は、私たち自身にも当てはまります。そのため、次の方針を取っています。
- 掲載サイトには出典として元サイトへのリンクを明示する
- スクリーンショットに対して、編集部による解説を添える
- 掲載サイトの運営者様からの取り下げ依頼には速やかに対応する
- 掲載にあたって対価は受け取らず、評価の操作も行わない
紹介する側にも責任があります。「参考になるサイト集」を名乗る以上、参考になる解説がなければ、ただの転載になってしまう。この記事を書いているのも、その自戒を含んでいます。
発注時に確認しておくこと
- 使用する写真・イラストの権利処理:素材サイトのライセンス、撮影した写真の使用範囲
- 納品物の著作権の扱い:譲渡されるのか、使用許諾なのか
- フォントのライセンス:Webフォントは商用利用の条件があります
- 他社サイトからの流用がないか:まれに、テンプレートや素材の出所が不明なケースがあります
まとめ
- 写真・文章・イラスト・ロゴは持ってこない。ここは明確な線
- 構成や配色を参考にすること自体は、通常は問題にならない
- 判断基準は「見た人が同じサイトだと勘違いするか」
- 参考にすべきは見た目ではなく、そのデザインになった理由
- 他社のスクリーンショットを自社サイトに載せるなら、自分の論評が主になる分量を書く
参考にすることを恐れる必要はありません。理由まで遡って参考にすれば、結果として真似にはならない。これが実務上の答えです。
なお、この記事は一般的な考え方の解説です。個別の案件で判断に迷う場合は、弁護士にご相談ください。
マザーハンズでは、広島・東京を拠点にWebサイトの制作とマーケティング支援を行っています。お問い合わせよりご相談ください。